不動産相続でかかる税金はいくら?相続税の基本から安くするための控除まで解説
不動産を相続したときは、相続税と登録免許税という2種類の税金がかかる可能性があります。税金を支払わないまま放置していると、加算税・延滞税が請求され、最悪の場合は不動産が差し押さえられるため要注意です。
この記事では、相続税の計算方法の基本から、相続税を安く抑えるための控除について詳しく解説します。トラブルを避けて確実に納税を済ませるために、相続が発生したときはまずこの記事をご参照ください。
不動産相続でかかる税金は2種類ある
不動産相続でかかる税金は2種類あります。相続税は有名ですが、それ以外にも登録免許税を支払うことになるため、それぞれがどのような税金なのかを知っておきましょう。各項目に分けて、わかりやすくお伝えします。
相続税
不動産等の遺産を相続する場合、一定額を超過すると相続税が発生します。相続税は現金もしくはクレジットカードで一括納付しなければなりません。相続税には基礎控除額などが決められており、遺産総額が控除額を下回る場合、相続税の支払いは不要です。
登録免許税
登録免許税は、所有地や面積などの情報を登記する際にかかる税金です。税額は固定資産評価額をもとに決まり、相続税のような控除はありません。仮に相続税の支払いが0円だとしても、登録免許税は必ずかかるため、注意しましょう。
不動産相続でかかる税金を計算する手順
不動産相続を行った場合、どれくらいの税金がかかるのか気になる方は多いでしょう。相続税・登録免許税を計算する際の手順は以下のとおりです。
<不動産相続でかかる税金を計算する手順>
①総遺産額を計算する
②課税される遺産の総額を計算する
③相続人が支払う遺産の合計額を計算する
④相続人ごとの納付額を計算する
なお、土地・建物の価値を評価するためには、特殊な計算が必要になります。すべての計算方法について詳しく解説していくので、順番に確認しましょう。
①総遺産額を計算する
相続税は不動産のみならず、預貯金などその他の遺産もすべて含めて計算する必要があります。また、借金などのマイナスの遺産は、プラスの遺産から差し引けることにも注目しましょう。加算するもの・減算できるものを表にまとめました。
【遺産として加算するもの・減算するもの】
加算するもの |
・不動産、預貯金、有価証券など故人の遺産 ・死亡保険金や死亡退職金 ・死亡する3年以内に生前贈与された財産 |
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減算するもの |
・借金や未払いの税金 ・葬儀費用や納骨費用 ・死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額 ・墓地や仏壇などの非課税財産 ・国や自治体、公益法人への寄付 |
預貯金や有価証券はすぐに金額がわかりますが、土地・建物については簡単な評価ができません。税務上は、市場で売買される実勢価格とは異なる方法で価値を算出する必要があるため、土地・建物の評価方法も知っておきましょう。
土地の評価方法
土地は路線価図を使って評価することが一般的です。国税庁が公表する路線価図から、土地に面する路線価を調べ、土地の面積をかけて評価額の計算をします。ただし、いびつな形の土地などは評価額が下がるため、この点も加味して評価することが重要です。
建物の評価方法
建物の評価には固定資産税評価額を用います。固定資産税を支払う際に郵送される、固定資産税課税証明書に表記されているため、この金額をそのまま利用しましょう。なお、賃貸の建物は評価額が下がり、一律30%を差し引けます。
②課税される遺産の総額を計算する
加算要素と減算要素から遺産の総額を計算し、そこから基礎控除額を差し引きましょう。相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。 法定相続人が4人いる場合、3,000万円+2,400万円なので、基礎控除額の合計は5,400万円となります。
基礎控除額が遺産総額を上回る場合、相続税は発生しません。しかし、遺産総額が基礎控除額を上回ると相続税の支払いが必要です。たとえば1億円の遺産がある場合、基礎控除額の5,400万円を差し引き、4,600万円が課税遺産総額となります。
③相続人が支払う遺産の合計額を計算する
相続人ごとの法定相続分から、個々の課税額を計算します。法定相続分は以下のとおりです。
<法定相続分の割合>
・配偶者と子どもが相続人の場合・・・配偶者1/2、子ども1/2
・配偶者と直系尊属が相続人の場合・・・配偶者2/3、直系尊属1/3
・配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合・・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
たとえば配偶者と子どもが相続人で、子どもが3人いると想定しましょう。先述した4,600万円が課税資産総額の場合、配偶者は1/2の2,300万円が相続税額です。子どもは1/2の2,300万円を3人で分けるため、1人あたりの相続税額は約767万円となります。
④相続人ごとの納付額を計算する
計算した相続税額から、個々の事情に応じた控除を適用できる場合、これを差し引きます。代表的な控除の内容と金額は以下のとおりです。
・小規模宅地等の特例
不動産を自宅として使用する場合、土地と建物の評価額を80%下げられる
・配偶者の税額軽減の特例
配偶者に限り、遺産総額の1億6,000万円までか、配偶者の法定相続分相当額(正味の遺産総額の1/2)までの、どちらか大きい方を控除できる
・未成年者控除
相続人が未成年の場合、20歳になるまでの年数×10万円を控除できる
・障害者控除
一般の障害者の場合は満85歳になるまでの年数×10万円、特別障害者は同20万円を控除できる
登録免許税は不動産評価額の0.4~2%
登録免許税は、不動産評価額に対して土地・建物ともに0.4~2%です。所有権を移転登記する際、売買や贈与・競売の場合は2%、相続の場合は0.4%の税率で登録免許税が徴収されます。
不動産相続で税金を納めないとどうなる?
不動産相続で相続税が発生した場合、これを納めないとどうなってしまうのでしょうか。相続税は国税であり、逃れられません。滞納を続けると重いペナルティを受ける可能性があるため、期限内に必ず納付しましょう。
無申告加算税・延滞税が追加で請求される
相続税を滞納すると、以下の無申告加算税が請求されます。
<無申告加算税>
・税務調査の通知前に自主申告した場合・・・5%
・税無調査の通知後に申告した場合・・・10~20%
また、滞納した期間に応じて以下の延滞税も追加されます。
<延滞税>
・納付期限の翌日から2ヶ月間・・・2.5%
・納付期限から2ヶ月を超過した日以降・・・8.8%
最終的には不動産が差し押さえられる
督促を受けた後も延滞を続けた場合、最終的には不動産を差し押さえられる可能性があります。一瞬にして財産を失うおそれがあるため、納付期限となる「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」 に申告を済ませましょう。
まとめ
不動産相続では、相続税と登録免許税という2つの税金がかかる可能性もあります。計算方法は複雑なので、過少申告・過大申告には十分に注意しましょう。税務上の手続きが不安な場合は、相続問題に詳しい司法書士や、税理士への相談をおすすめします。
星野事務所では、相続や税金回りの手続きを一括して代行するサービスを提供しております。費用面に関するご相談も随時受け付けておりますので、ご用命の際はお気軽にご連絡ください。