不動産の生前贈与は相続税対策になる?メリット・デメリット、相続との違いも解説します
相続税対策として多くの人が行っている方法は生前贈与です。それでは、不動産を生前贈与することで相続税対策を実現できるのでしょうか。この記事では、不動産の生前贈与に関するメリット・デメリット、相続との違い、そして注意点についても解説します。
不動産の生前贈与とは
不動産の生前贈与とは、その名のとおり被相続人が死亡する前に、特定の相続人に対して不動産を贈与することです。生前贈与は相続税対策の一環として行われるケースが目立ちます。また、確実に自分が選んだ相手に相続できることも生前贈与の特徴で、不動産の相続を見届けることが可能です。
生前贈与と相続は支払う税金の種類が違う
生前贈与と比較されることが多いのは相続です。生前贈与と相続の違いは、ずばり支払う税金の種類の違いになります。生前贈与には贈与税が適用され、相続では相続税が適用されることになり、税率や控除の内容が異なるのです。この2つを使い分けることにより、節税効果が生まれます。
不動産を生前贈与するメリット・デメリット
不動産を生前贈与するメリットとデメリットの両方を表にまとめました。生前贈与によって相続税対策になる可能性もありますが、デメリットも多いため注意しましょう。
【不動産を生前贈与するメリット・デメリットの比較表】
メリット |
①:贈与する相手を自分自身で選べる ②:将来の相続税を軽減させられる ③:不動産の価値が上がる前に実質的な相続を完了させられる ④:贈与税の配偶者控除を適用できる |
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デメリット |
①:贈与税は相続税よりも高い ②:相続開始から3年以内の贈与は相続とみなされる ③:贈与税の連帯納付義務を負う ④:その他の相続人との関係が悪化する可能性もある |
メリット・デメリットを4つずつピックアップして、それぞれを詳しく解説します。
メリット①:贈与する相手を自分自身で選べる
贈与する相手を自分自身で選べることがメリットです。相続の場合は遺言書で希望を残せますが、法定相続分もあるため、希望どおりに遺産分割される保証はありません。一方、生前贈与なら、自分自身で確実に相続させたい人物を選び、財産の継承を見届けることもできます。
メリット②:将来の相続税を軽減させられる
生前贈与を行うことで、自分自身が保有する財産を減らせるため、相続人が将来支払う相続税を軽減させられます。たとえば不動産の価値が1億円を超える場合、基礎控除を上回り相続税が発生することはほぼ確実でしょう。財産をコントロールすることにより、遺産総額を基礎控除内に抑えられる可能性があります。
メリット③:不動産の価値が上がる前に実質的な相続を完了させられる
相続税は所有者が死亡した時点の評価額を基準に決まりますが、贈与税は贈与が行われた時点の評価額に対して課税されます。そのため、将来的に不動産の価値がほぼ確実に上昇する以下のようなケースなら、納税額を安くできる確率が上がるでしょう。
<将来的な不動産の価格上昇が見込めるケース>
・周辺の宅地開発が進んでいる場合
・新しい道路や駅が完成する見込みが高まっている場合
・商業施設の建設予定がある場合
メリット④:贈与税の配偶者控除を適用できる
配偶者に生前贈与する場合、贈与税の配偶者控除が適用されます。婚姻関係が20年以上の場合に限られますが、居住用不動産を贈与する場合、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円までの控除が可能です。
デメリット①:贈与税は相続税よりも高い
贈与税の税率は、相続税の税率と比べて高くなりがちです。節税のために行う生前贈与が、かえって割高になるおそれもあるため注意しましょう。財産の内容を把握したうえで贈与税・相続税の計算を行い、どちらが得かを見極めることが重要です。
デメリット②:相続開始から3年以内の贈与は相続とみなされる
相続開始(被相続人が死亡した日)から遡って3年以内に行った贈与は相続としてみなされ、相続税の課税対象になります。たとえば末期がんなどの告知を受け、慌てて生前贈与を始めても、それから3年以内に死亡した場合は贈与としてみなされません。
デメリット③:贈与税の連帯納付義務を負う
贈与税は贈与を受けた人物に課されますが、仮に贈与を受けた人が贈与税を支払わなかった場合、贈与した人物が贈与税を支払わなければなりません。財産贈与に加えて税負担を求められる可能性もあるため注意しましょう。
デメリット④:その他の相続人との関係が悪化する可能性もある
相続人が複数いる場合、特定の相続人に対して生前贈与を行っていることが他の相続人に伝わると、贈与した人物以外との関係が悪化する可能性もあります。不平等に感じられる場合もあるため、ひいきをせずに遺産相続を行いたい場合は、生前贈与は避けた方が良いでしょう。
不動産を生前贈与する際の注意点
不動産を生前贈与する場合、失敗を避けるためにいくつかの注意点を把握する必要があります。特に注意すべきことを3つピックアップしました。
<不動産を生前贈与する際の注意点>
・贈与契約書を作成する必要がある
・贈与には受け取る側の合意が必要
・定額贈与には落とし穴がある
それぞれのポイントをわかりやすく解説していきます。生前贈与が無効になったり、効果が半減したりしないように、充分に確認したうえで手続きを始めましょう。
贈与契約書を作成する必要がある
生前贈与を確実に行うためには、贈与契約書の作成が必要です。贈与税の基礎控除を適用するためには、贈与の事実が客観的に認められなければなりません。そのために有効なのが贈与契約書で、贈与契約書には以下の5点を記載する必要があります。
<贈与契約書に明記できること>
・贈与者
・贈与時期
・贈与財産の内容
・贈与の方法
・贈与を受ける人
これらが生前贈与の事実を示す根拠となるため、必ず贈与契約書を作成しましょう。
贈与には受け取る側の合意が必要
贈与には受け取る側の合意が必要です。合意なしで贈与した場合、生前贈与を認められない可能性があるため注意しましょう。たとえば孫に100万円の生前贈与を行ったとして、このお金を両親が管理していた場合、生前贈与したはずの金額は親の相続財産とみなされます。
定額贈与には落とし穴がある
生前贈与は年間110万円までの基礎控除が認められるため、基礎控除の範囲内で定額贈与を続ける人も多くおられます。しかし、もしも定額贈与の途中で被相続人が死亡した場合は、残った財産をすべて相続扱いで引き継がなければなりません。仮に3,000万円を生前贈与したい場合、非課税で贈与が終わるのは贈与開始から約27年後と、遠い未来になります。
まとめ
生前贈与は不動産でも行えます。ただし相続税よりも贈与税の方が高くなるケースもあるため、財産の内容や総額を考慮しながら引き継ぐ方法を検討しましょう。星野事務所では、生前贈与をはじめとする相続に関するあらゆるご相談をお受けし、最適な節税方法をご提案いたします。